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セカンドアルバム『beach party』についてメンバー4人で喋ってみました

(2015.6.12更新)

DCRC-0035

『beach party』(DECKREC)

2001年9月7日 発売

 

1.勝手にしやがれ

2.キミとオレ
3.ゆうべあのこが
4.アフィルグ
5.朝焼けのカウボーイ
6.こぼれそうな涙
7.OH YEAH!
8.DARLIN’
9.ビーチパーティー
10.COM’ON SUNSET BACK
11.RAINY GYPSY BABY

 


 

「切ない、いいメロディーの曲なのに音が爆裂でFUNKYみたいなね。

そういうのは他にないからさ」(マツキ)

 

コヤマ「さて、『beach party』!」

 

MOBY「ナガイケが入って3月からレコーディングが始まって…。レコーディングの他にも仕事があって、で、ビクターとの交渉みたいのも始まってたんだよ」

 

コヤマ「レコーディングってどういう時間帯でやってたんだっけ?一週間に何回かみたいな?」

 

マツキ「土日はやってさ。ウィークデイは夜の7時とかに集まって2時間だけやるみたいな」

 

コヤマ「そーか。ほぼ休みなしで、ぶっ続けでやってたよね」

 

マツキ「やってた。結構長かった」

 

コヤマ「(都心で)仕事終わってから(スタジオのある千葉県の)西船橋まで行ってたから、移動が半端なかった(笑)」

 

MOBY「終電逃して、うち(MOBYの実家がある本八幡)に2回ぐらい泊まりに来て。スケジュール的には、ホンットむちゃくちゃだったわぁ…」

 

コヤマ「そんな状況の中、SCOOBIE DOレコーディング初参加のナガイケはなんか覚えてることある?」

 

ナガイケ「……「音が遠くならないようにしてください」って言ってたのを凄くよく覚えてる。アンビ(注1)を出したいんだけど、

音が遠くなるのはやなんです!っていうのを、俺もよく分かんないなりに「そうか。そういうもんなのか」と思ったりして(笑)」

 

MOBY「アンビをオンで聴きたいみたいなね」

 

コヤマ「だからギターもリアンプ(注2)とかしてたもんね。思いついた!っつって」

 

マツキ「そうそう。なんかもうよく分かってなかったんだよなぁ(笑)」

 

コヤマ「でもめちゃくちゃいろんなこと試したよね!で、ナガイケにも結構ジャッジを仰いだ気がする。これどう?落ち着いてない?って(笑)」

 

ナガイケ「そうだったっけ?(笑)。でも、「勝手にしやがれ」のハープの“ッンッン“っていうのは、なんか俺言った気がする。そういうことやったらどうですかって(笑)」

 

コヤマ「ホント?俺はてっきりJunior Wells(注3)の影響かと思ってたわ」

 

マツキ「いやでも、これこそ念の塊だよね。過去に作ったやつの、こうするとこうなるっていう経験があって、

で、絶対それを超えなきゃっていう思いがなんかあってさ。とりあえず、音量だけでも過去の作品よりでかくないと!みたいな(笑)。

当時、音がでかいバンドいっぱいいたからねぇ。音がでかいとカッコいいみたいなのあったもんね、CD聴いたときのさ」

 

コヤマ「当時、丁度そういうのがあったんだよね。我々の周りでも。音量と音圧はマスタリングで上げるんだ!っていうのが。

ゆらゆら帝国とかもそうなんだけど、椎名林檎さんのCDとかね」

 

マツキ「ね」

 

MOBY「マスタリングは6月ぐらいだったかなぁ」

 

コヤマ「スッゲー長い間録ってた印象なんだよなぁ。でさ、『beach party』なんだけど最初の3枚とは全然違うんだけさ、

その時点での(SCOOBIE DOの)完成型であるような気はするんだよね。FUNKYなやつとMELLOWなやつと、

あとその合体したやつもあるっていうね。今の俺らのスタイルの元になる部分の完成型っていう。いまだにライブでやる曲も多いし」

 

MOBY「個人的には(収録曲の)「ビーチパーティー」が凄い良い出来だなって思うんですけど」

 

コヤマ「あれはなかなか面白い音で録れてる」

 

マツキ「あんまりない音像だよね。ドラムがなんか変なとこにいるんだよね」

 

MOBY「腰高っていうかね。あれだけミュート(注4)してるんですよ。

で、そのあとミュートするようになったでしょ?俺。レコーディングの時に」

 

コヤマ「なるほど!ミュートを覚えた!他になんかある?レコーディングの思い出」

 

MOBY「僕、これねぇ、思い出したんだけど、レコーディングの初日、確か「OH YEAH!」を録った後だと思うんだけど、

スネアのヘッド破ってんだよね。で、家まで機材車で取りに行ったんだけど…」

 

マツキ「あぁ!すんげぇ渋滞で」

 

ナガイケ「車が全然進まなくて。で、レコーディングも進まなかったんだよね(笑)」

 

MOBY「で、あのヘッド、ファイバースキンってやつ、やめようって思いました(笑)。後……みんなで(ミキサー)卓をいじったよね!

PANを自分で動かしたりとか」

 

マツキ「そうだそうだ」

 

コヤマ「「RAINY GIPSY BABY」とかね、リバーブをかけたいんだけど、最初っからホワーンとかかってんのが嫌で、

音のケツだけにかけたいとかっつって。で、録り音を流しながら、リアルタイムでつまみをスッといじってさ(笑)。

それをまた録るっていう。まぁダブ(注5)みたいなことなんだけど。ここらへんにも念の塊感はあるよね」

 

MOBY「今だったらPro Tools(注6)で操作一発でできるんだけどね」

 

マツキ「でも、全曲そうやってるもんね。自分の楽器のツキたいところを自分でツイて、それをまた録るっていうやり方」

 

コヤマ「(エンジニアの)ユウさんがいくぞーとかいってね。「今ダァ!」って全員がグイってツマミをいじったりして(笑)」

 

マツキ「そうだよね。だから、MIXでも演奏してるってことだよね」

 

MOBY「そうそう。で、最後に「キミとオレ」をラージ(スピーカー)で聴いてさ。で、マスタリングに持ってってさ。

そこで、歪みを足すっていう(笑)」

 

コヤマ「さらに歪ませたってことなのか?マスタリング前の音ってのが、今聴きたいね」

 

マツキ「でもね、マスタリング前のやつも歪みまでいかないけど…ミキサー卓上ではそこそこ入ってたと思うんだよなぁ。

…でもやっぱマスタリングかなぁ。ゆら帝の『III』(注7)を持ってって、これと同じくらい(の音量)にしてください、とか言って。

で、最初に「アフィルグ」をやって、エンジニアの人に「音割れちゃうけどいいの?できるけど」とか言われて。

で、「じゃあやってください」とかって言ってさ。その記憶はスゲェあるなぁ。マスタリング、2日に分けてやったんだよね」

 

コヤマ「へー!インディなのになかなか贅沢な」

 

マツキ「ね。意外に色々かかってるんですよ。でも、音圧や音量も重要だったんだよね。

切ない、いいメロディーの曲なのに音が爆裂でFUNKYみたいなね。そういうのは他にないからさ」

 

コヤマ「ね。そこは追い求めてた」

 

MOBY「で、MUSIC MAGAZINEのDISC REVIEWに初めて取り上げられてね。安田謙一さん(注8)が書いてくれたんだよね。嬉しかったなぁ」

 

ナガイケ「でも作った時は、スゲェ音悪い!って印象はなかったでしょ?」

 

マツキ・コヤマ「なかった!なかった!」

 

MOBY「まったくないね」

 

ナガイケ「ビクターの人とかがさ、「あの盤、音悪いよね?」とか言ってるのを聴いて、「おやおや?」「そうなの?」ってなったっていうくらいで(笑)」

 

コヤマ「いまだに別に「悪いな」って思わないもんね」

 

ナガイケ「そうそう!ただスゲェな!っていう(笑)」

 

マツキ「当時、俺たちがいたところがさ、そういう場所だったってところもあるよね。ちぇるしぃとか、京大の吉田寮でカセットテープで録音したヤツをCDにしてたり。ガレージはガレージでひとつちゃんとしたシーンがあったからね」

 

ナガイケ「音悪くてなんぼ、みたいなのもあったかもしれない」

 

コヤマ「で、マスタリング終わってさ。タイちゃん家でみんなで聴いた記憶がある」

 

マツキ「そうだっけ」

 

ナガイケ「うん。マスタリングの後ね、マツキさん家泊まった覚えがありますね」

 

コヤマ「そいで、みんなで飯食いながら飲みながら、出来たばかりの音を聴いてさ、40分ないじゃないあれ。だから、パーッとすぐ終わるんだけど。それを聴きながら「あぁ、いい盤作っちまったなぁ」みたいな」

 

マツキ「はははははははははは!」

 

コヤマ「「いいアルバムだねぇ」って、まぁ口には出さないんだけどさ、みんながそんな風に思ってる雰囲気で。で、何度もリピートして聴いたのを凄い覚えてるなぁ」

 

マツキ「いいアルバム感、そして頑張った感は確かにあったね!」

 

スキャン 14

アルバム『beach party』ジャケット内写真カラーバージョン。

スキャン 16

アルバム『beach party』ジャケット内写真カラーバージョンその2。

 


 

 

※1 アンビエンス。スタジオ、部屋などで鳴っている響きそのもののこと。レコーディング時に、楽器そのものではなく楽器から離れた空間にマイクを向けその響き自体を録音する。楽器の実音というよりは部屋で鳴っている感じ、生音感を出したい時に、このアンビエンスを録音した音を使用し臨場感を出したりする。

 

※2 まずギターやベースなどをアンプを通さないでレコーディングし、その音をスタジオ内のアンプからもう一度鳴らして、レコーディングし直す作業。『beach party』レコーディング時には、「ギターの音を、ドラムやベースの音と干渉し合わずに、アンビ込みのいい音で録音したい」という複雑な要求を満たす方法として使われた。

 

※3 ジュニア・ウェルズ。シカゴのブルースシンガー/ハーピスト。ハーピストとしても名高いが、彼の一番の持ち味はロックンロール的な呼吸、躍動感を持つそのFUNKYな節回し、歌声であると思う。SCOOBIE DOもカバーし『GRAND FROG SESSIONS』に収録された永遠の名曲「Messin’ With The Kid」は『CHICAGO BLUES TODAY vol.1』(VANGUARD)収録のバージョンがボーカル、ハーモニカともに最高。コヤマ、マツキ、MOBYの三名は青山Blue Noteでの来日公演にてライブ後に、ビールをおごってもらった経験がある。その翌年、1998年永眠。

 

※4 理想のサウンドを得るためにドラムの音鳴りをわざと抑えて、調整する方法。

 

※5 レゲエから発祥した音楽手法、および音楽ジャンル。手法としてのダブは、サウンドにリアルタイムでエフェクトを加えて、トラックを進化させるという独特のやり方を取る。ジャンルとしてのダブは、楽曲のリズムを強調してミキシングし、エコーやリバーブなどのエフェクトを過剰に施すことで、原曲とは全く別の作品に作り変えてしまう音源を指す。リミックスの元祖とも言われる。

 

※6 プロツールス。作曲、レコーディング、編集、ミキシング、などが全てできてしまう、現在の音楽業界内の標準的ハードディスクレコーディングシステム。録音した音を編集することで、ピッチ、リズムの調整、音の切り貼りetcが容易にできることから、レコーディングの面倒な作業をショートカットすることが可能となり、レコーディングの時間を大幅に短縮できるようになった。最近は、Pro Toolsの編集を頼りにレコーディングすることが「なんか本来の音楽からかけ離れちゃってきてねぇか?」とあえて使わずレコーディングする人も多い。

 

※7 ゆらゆら帝国のメジャーリリースサードアルバム。楽曲の素晴らしさはもちろんの事、当時のロックキッズを驚かせたのはその音量と音圧であった。欧米の音楽に負けない迫力、欧米の音楽にはない質感と高揚感は、日本のロックバンド、ロックキッズにたくさんの勇気を与えた。

 

※8 やすだけんいち氏。文筆家、ロック漫筆家、ラジオDJ、作詞家。SCOOBIE DOの『beach party』を激賞してくれたこのDISC REVIEWは、氏のコラムをまとめた単行本『ピントがボケる音』(2003年)に収録されている。

 

(構成・文:ダイナマイト木戸)

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