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(2015.7.31更新)
GET UP(VICTOR/SPEEDSTAR RECORDS)
2002年6月19日 発売
1.Get Up
2.The Thing
3.ゆうべあのこが
4.夕焼けのメロディー
5.RIDE ON TIME
コヤマ「全都道府県ツアー(注1)の後にレコーディングしてんのかな?」
MOBY「えっといや、2001年の11月とかに確かまずプリプロ(注2)行ってんだよ」
マツキ「山中湖とかだっけか」
MOBY「そう」
ナガイケ「めちゃくちゃ飲んだやつ(注3)(ニヤニヤ)」
コヤマ「それはレコーディングはホンちゃんじゃなくてプリプロだったんだ」
マツキ「プリプロだねぇ」
ナガイケ「「Get Up」のアレンジが、全然うまくいかなくて。っていう合宿だったってのはすごい覚えてる」
MOBY「そう。で、レコーディングは全都道府県ツアーに出る前」
コヤマ「ふーん、そうか。プリプロもやり、完成まで漕ぎ着けたメジャー第一弾の『GET UP』ですが。これはまったく新しい曲は2曲だけなんだよね。で、後は再録2曲と『RIDE ON TIME』(注4)のカバー1曲か。これはどういう感じで作ったんでしょうか」
マツキ「これはたぶんね、夕焼け(のメロディー)みたいな曲を作ろうってノリだったと思うんだよね。(メジャーでのリリースが決まって)その時にもうマネジメントが付いた頃だったから、ナベちゃん(注5)とかとよくミーティングを…、うーん、やってたのかなぁ。SCOOOBIEの二本柱、ロックンロール路線・アゲアゲなFUNKY路線と、いいメロディのいい曲・MELLOW路線みたいなさ、その両方を作った方がいいって言われたんだか、自分の中で最初からそう思ったんだか、覚えてないんだけど。とにかくそんな感じで作り始めて。で、「Get Up」は夕焼けみたいな曲をまずは作んなきゃいけないんだなって思って。で、「Thing」はまぁリズム&ブルースで、ガレージ風味のある、いわゆるSCOOBIE DOって感じでさ。まずは俺たちを知らない人に、この2曲で知らしめなきゃいけない!っていうようなイメージで作ってたんだと思うんだよね」
コヤマ「あいさつ代わりの、ってやつだね」
マツキ「だからね、アレンジにはどっちも結構時間かかったと思うよ。「Thing」も最初はワンコードで押してたのを、サビまでにコードが展開するようにしたりとか。「Get Up」も最初は、あそこまで(Aメロが)ブレイクする感じじゃなかったし。サビももうちょっと大きかったしね」
ナガイケ「うんうん。サビがなんかそう、もうちょっと複雑だった覚えがあるんだよね」
MOBY「俺、記憶あんだけどぉ、リハスタでアレンジしてる時にミーターズ(注6)が高速でやったらどうなんのか?みたいな話をしたの覚えてんだよ」
マツキ「だから、最初はもう少しまったりした運びだったんだろうね」
コヤマ「最後の最後までアレンジ粘ったのが良かったんだよね。最初は歌ものっぽい歌ものだったんだけど、そこにFUNKYなものをちゃんと入れることが出来たっていうね。で、今までにない感じにもなってるっていう。結果、代表曲として、いまだにねぇ」
マツキ「(メジャー)デビュー曲にしてはいい曲が出来たんだよ(笑)」
コヤマ「で、(ラジオ局の)パワープレイみたいなものをいっぱい取れたからってのもあるんだけど、意外にさ、ミュージシャンの人も知ってくれてて、反応が良かったらしいんだよね。こういう「Get Up」みたいなコード感で、演奏がバシバシキテるっていうのがなかったらしくてね。割と「あ、やられた!」みたいなさ(笑)」
MOBY「俺、サンコンさん(注7)に言われたね。「俺たちがやりたいことやりやがって!」みたいな」
コヤマ「ま、そういう話は、俺たちだいぶ後になってから聞くんだけど(笑)。当時は全然知らない!」
ナガイケ「へー。俺はもうアレンジが難航しすぎて、当時はこれが正直いい曲なのかどうなのかもよくわからないままレコーディングが終わったていう感じがありましたけどね(笑)」
コヤマ「なはははは。結果的に良かった(笑)。でも、歌詞の面ではね、結構、方向転換ていうかさ。『beach party』の「キミとオレ」みたいな曲はあったにせよ、もっと直接的っていうか、当時の感覚だとメジャー感ていうか(笑)。ここまではっきり言っていくんだぁ、ってのは、少なからず曲が出来てきた時にあったんだけど」
マツキ「生々しいっちゃ生々しい」
コヤマ「うん、まぁ、いわゆるメッセージソングっていうさ。そこはなんか意識があったんかねぇ、作る時に」
マツキ「いや、あのね、多分ね、作り方は全然変わってないから…、単純に閃いた言葉が良かったんじゃないかな。「あこがれに手を振ろうぜ」ってのがメロディにバチっとはまって。そこが最初にできたのはスゲェ覚えてるから」
コヤマ「サビから出来たんだ!」
マツキ「これってなんかいいなぁと思って、で、後から、歌い出しとかを作っていった記憶があるから。だから、たまたまっちゃたまたまなんだよね」
コヤマ「メジャー第一弾で、もっとみんなにわかりやすい言葉で、とかっていう考えよりも、作ろう!ってなって出来たサビが、それだったからってことか」
マツキ「だと思うよ。でも「あこがれに手を振ろうぜ」っていうフレーズが、そういう状況にいたから、その時の気持ちを目指して出てきた言葉なのかもしれないけどね」
コヤマ「そうか。じゃあ、方向転換したってわけでもなく、すごい自然に出来たんだねぇ」
マツキ「「Thing」も「圧倒的な〜」っていうのが出てきたら、あとは全部出来ちゃったし」
コヤマ「「Thing」の方は、俺達のそれまでの感じと繋がってるっていうのがすごい分かるのよ。でも「Get Up」はさ、変わったって感じがするんだよね」
マツキ「でも多分そこが、俺らが他にないところっていうかさ。当時、ガレージシーンみたいなものもあったけど、周りにいっぱいいたバンドがやんなかったことを、それを自分たちが納得するような形でカッコよく聴かせたいっていうね。で、そこが出来るんだったら、SCOOBIEの存在価値はあるんだろう、みたいなことは思ってたから。だから「Get Up」みたいな曲は、なかなか出来ない曲だとは思うけど(笑)」
コヤマ「じゃあ一番いいタイミングで出来たんだな。“SCOOBIE DOのやるソウルミュージック”っていうのを、はっきり形に出来た曲だと思うんだよ。他には、なんかあったりしますか?トピックは」
MOBY「クリック(注8)との闘いですね、ワタシはね!当時はもう、どういう音録るかじゃなくて、いかに今日はクリックとうまく出来るかみたいな!だって、やったことなかったから!」
コヤマ「へー。あの盤はクリック使ってんだ。「Get Up」もクリック使ってんの?」
MOBY「使ってる」
ナガイケ「へー。そうなんだ」
コヤマ「あんま感じないね、「Get Up」はね」
MOBY「いや、だから多分すげぇ練習したんだと思う」
コヤマ「「ゆうべあのこが」のクリックは、パーカッションの打ち込みみたいのだったよね?」
MOBY「で、で、クリックの使い方を変えたの!カッカッっていうやつじゃなくて、パーカッションだったらいいんじゃないの?って三原さん(注9)がアドバイスしてくれて。で、(クリック代わりの)パーカッションがそのまま音源にも入ってて。だからあれはクリックだから、クレジットにもパーカッションっていう表記がないの。「Thing」は(クリック使って)いいね!ってなった。今までにないノリがでて。結局、全曲使った。とにかく他のものがリズムを出すっていうのが、今までなかったからねぇ」
コヤマ「そうか、やってなかったのか」
MOBY「だってやってないでしょ!『beach party』とか!でも、それが(クリックを使って)レコーディングしていくうちにどこからか、使いようによっては武器になるっていう風に変わるんだけど。当時は恐怖、まぁ恐怖とまではいかないけど、怖かった。まぁでもそれはドラマーとしては誰しも!!誰しも割と思うとこなんだけど」
コヤマ「なんでそんなに使ってたんだろうかね。なんかあったんかね」
MOBY「マナー!まぁマナーなんでしょう。業界のマナー。後から、オケをエディットするとか、音を差し込む時にあった方がいいとかってのもあるんだろうけど。ただ、そこでやっといたのは今になってみればよかったけど」
マツキ「経験としてね」
MOBY「そうそう」
ナガイケ「しかも、名盤になったし。いやぁ、闘いに勝ってくれてよかった(笑)!」
2002年の全都道府県ツアー『SOUL to SOUL』のフライヤー。ライブスケジュールに加え、メンバープロフィールなどにもご注目いただきたい。
※1メジャーデビュー前に、全国各地へのプロモーションも兼ね、2002年2月2日静岡SUNASHを皮切りに4月21日渋谷QUATTROまで2ヶ月半で全国47都道府県を回り49公演を行ったツアー。機材車一台で2ヶ月半行きっぱなしの“過酷”かつ“超過酷”な行程であったが、のちにLIVE CHAMPと呼ばれることになるバンドの礎を形作ることになった貴重なツアーであった。デキシード・ザ・エモンズ、ネタンダーズ、オーサカ=モノレール、初恋の嵐、騒音寺、King Brothers、The Shotgun Runners、ACIDMAN、Clingon、THE PRIVATES、BAZRA etcとの対バンを行った。
※2プリプロダクションの略。本番のレコーディングに入る前に、曲の構成を練り直したり、歌詞を手直ししたり、アレンジやテンポを確認・調整することで、レコーディングに取り掛かる前に曲のクオリティーを上げる作業。本番の進行をスムーズに行える、という効果もある。
※3プリプロのための合宿をおこなった山中湖の宿泊施設付きスタジオに到着し、冷蔵庫を開けたらビールがたくさん入っていたので、わーいと喜んで飲み干したところ、後日、ディレクターの元にすんげぇ額の請求がきたという武勇伝というか若気の至りというか思い出。
※4山下達郎氏1980年の発表の大ヒットナンバー。『GET UP』に収録された、これぞSCOOBIE DOなアレンジを施したカバーバージョンは、フェスなどのサウンドチェック時に演奏されることが多く、会場に訪れたPLUS ONE MOREの密かな楽しみになっている。
※5渡邊文武(わたなべふみたけ)氏。元・サニーデイ・サービス ディレクターであり、元・SCOOBIE DOメジャー時代所属事務所プロデューサー。
※6The Meters。アメリカ合衆国ルイジアナ州ニューオーリンズのR&Bバンド。ニューオーリンズ・ファンク・サウンドを生み出した第一人者的存在。SCOOBIE DO的には、時間と空間を捻じ曲げFUNKさせた独特の音像が中毒性高し!なJosieレーベル時代の初期3作『The Meters』、『Look-Ka Py Py』、『Struttin’ 』を推したい。
※7 サンコンJr(サンコンジュニア)氏。いわずとしれたウルフルズのドラマー。レギュラーグリップでドカドカと叩き上げるパワフルなドラミングが特徴。最近ではNHK Eテレの音楽教育番組「ムジカピッコリーノ」へのレギュラー出演も話題となった。
※8 曲のテンポを安定させるために使われる、メトロノームのようなリズム信号。
※9 三原重夫(みはらしげお)氏。ドラマー&ドラムテクニシャン。SCOOBIE DOメジャーデビュー時のドラムテックを担当していた。飄々とした物腰ながら、ドラムへの愛情と探究心は山よりも高く海よりも深い。オフィシャルホームページに掲載されている氏のコラムやブログはグルーブを武器にしたいバンドマン必読!→http://i.gmobb.jp/mihara/
(構成・文:ダイナマイト木戸)