ナガイケジョー
縄跳び
【2015/6/16】
連日の心地よい夜風に誘われて私は縄跳びを手にした。
二ヶ月ほど前に思い立って買っていたものだ。
買ったは良いがそれから何回かピョンピョン跳ねてみただけで
以来あまり登場の機会はなかった。
私は早速さぼったのだ。
しかし今日の夜風はどうだ。
その縄跳びを手にして跳ねろ、今すぐやってみろと
爽やかな先輩が耳元でささやくようなイタズラな誘惑。
私は家のすぐ隣りの公園へと足を向けた。
人気のない静けさで満たされた公園は、
今まさに縄跳ばんとする私を受け入れるのに最も相応しい場に思われた。
心地よい風が吹いている。
よし、ここで跳ぼう、と思ったすぐ目の前に
握りこぶし大の黒っぽい塊が落ちていた。
闇よりも闇らしい塊は、しかしたくましい質感を帯びながら
鈍ったらしい存在感をジリジリとこちらへと主張してくるようだった。
私は瞬時に察知した。
この質感には何度も見覚えがあった。
ヤツだ、カエルだ、ヒキガエルだ。
ヤツは今こちらに背を向けている。
どこか遠くを見つめている。
いや、目の前をかすめていく風の流れを読んでいるのかもしれない。
それとも背後に生き物の気配を感じ取って
次なる一歩をいかようにして踏み出そうかと思案しているのだろうか。
私はどうしようか暫し考えてはみたものの
このまま3メートル程の距離を保っていれば何ら害を被ることはないであろう、と
タカをくくって跳躍を開始した。
規則正しいリズムを刻みながら、一瞬生まれる地面と足元との隙間を
縄が高速ですり抜けていくスリル。これが縄跳びだ。
縄が地面をかすめていく音と、空気を裂く音とが
交互に静かな公園内に響き渡る。
徐々に乱れ始めるこちらの呼吸をよそに
ヤツはまだ微動だにしないでいる。
さぁ動け、跳ねろ、オマエも思い切って跳ねてみろよ!
と、跳ねながらも私の視線はヤツ一点に定められている。
そして跳躍を続けること100回辺りに到達しようという時に
ヤツはハッとしたようにして
思いがけない大股でノソノソと歩いてみせた。
私は一瞬ドキリとした。
つい跳ねるものだと思っていた。
使い慣れない駅のホームで
勝手に右側から来るものだと思い込んでいた下り電車が
左側からホームに入ってきた時のような驚きを憶えた。
そしてノソノソは予想以上に速いノソノソであった。
四肢は伸びると案外長かった。
数歩歩いてまた束の間立ち止まったかと思うと
今度はピョン、ピョンと2回跳ねた。
ヤツはやはり跳ねることもできるのだ。
方やこちらはなおも跳ね続けて150…160…170…と息も絶え絶え。
やっとのことで200回の跳躍を終える頃、
ヤツは再び大股を開いてノソノソと歩きながら
あじさいの木の下へと姿を消していった。
ハァ、ハァ、と息を切らしながら
私はヤツがいなくなった地面の一点を見つめていた。
時空にポッカリと空いた穴のようだったヤツの影がなくなっただけで
そこにはイビツな喪失感があるように思われた。
相変わらず辺りは音もなく静かであった。
サラサラと吹き抜ける夜風が
力強く茂ったあじさいの葉を揺らすたびに
これからが私たちの季節なのだぞ、と彼ら葉の一枚一枚が
静かに私に訴えかけてくるようであった。
2015の夜
【2015/6/15】
6月14日 深夜
夜風が冷たくて心地よい
半袖じゃちょっと肌寒いくらい
暗い窓辺から
まだ日曜を終わらせたくない輩の
賑やかなバイクの音が聞こえてくる
15の夜 はもうとっくのとうに過ぎ去って
今や2015の夜
毎晩が皆に平等に2015の夜
2回も言ってしまうとなんだか恥ずかしい
体温が上がって半袖に夜風がちょうど良い
もうバイクの音は聞こえない
さてどこから書き始めれば良いものか
前回が倉敷での話
そのあと美星町hoshiotoで雨の中ライブをかっ飛ばし
翌日は米子でかっ飛ばし
一路東京へとかっ飛ばし
束の間の休日をかっ飛ばし
新潟&高崎とかっ飛ばし
宇都宮でかっ飛ばし
かっかっかっと色んなこと笑い飛ばし
ツカんだりナヤんだりモガいたりしながら
毎日のページを大雑把に飛ばし飛ばし
いつの間にか6月も中旬でバシバシと
夏の予定も決まって参りまして
今にも発表してしまいたい熱は冷まし冷まし
今すぐブログを更新しようとダマしダマし
はぁもう寝てしまった方がマシと思いつつ
チビリ舐め始めたJAPAN日本酒がうましうましで
もう書くっきゃない
と心に誓ってまたチビリ、うまし
で、すぐなくなる
コップにお酒を足し足し、際限なし
このままじゃ危うし、もう夜遅いし
まるで中身なし、もはや止むなし、あぁむなし
次回ライブは
6/17(水) 渋谷CLUB QUATTRO w/ZAZEN BOYS
ベーシスト界の劇薬こと吉田一郎くんと相見えるDEATH
当日券あります
平日の夜に、変態たちのつDOいへ、是非
んでもって最近
藤井一彦氏からいただいたTHE GROOVERSの新譜
『Groovism』ばかり聴いてます
僭越ながらコメント寄せたりしつつ
(音源送るので明日までにコメントください、って! 笑)
特設サイトにある藤井さんのコメントがオラ好きダ。
http://www.breast.co.jp/thegroovers/groovism/
イカすぜ。
倉敷 蟲の足で歩く
【2015/6/2】
5月29日
この日は内田百閒氏の生誕日だということ
岩波書店からのツイートで知る。
死んだ人間の産まれた日を話題にするなんて
バカな話も大概になさい、と
百鬼園先生ならそうツブやかれるかも知れませんが
そんな記念の日に氏の出身地である岡山県に
(市内ではなく倉敷ではありますが)
滞在するという縁に、少しばかり興奮気味の筆者。
氏の「阿房列車」の旅ならぬ足を使った「阿房徒歩」の旅、
さっそく倉敷の街をアホ面さげて歩いてみることにする。
駅前のホテルを出るとすぐアーケード街。えびす通り。
年期の入った商店が立ち並ぶ何の変哲もない商店街であるが、
しばらく歩いてみると
レトロな商品がところ狭しと並べられたアンティークショップやオモチャ屋、
オシャレなカフェやカレー屋、
柔らかい色合いで構成された内装がステキな雑貨屋など、
こだわりをもった店主が倉敷という街に惚れ込んで開店しましたどうぞよろしく
といった感じのD.I.Y.精神みなぎる店舗が多く展開されていて、
その間にはもちろん老舗の肉屋や備前焼のお店やらが鎮座する
といった新旧のバランスが程良く散策心をくすぐってくる。
備前焼の、ザラリとツルリがうまく共存した質感と
天の光と地の闇とをネリネリとこねくり回した感じの色合い、好き。
これでコーヒー飲みたい、ビール飲みたい、焼酎飲みたい…etc.
あらゆる内容物の味わいが一層深まる気がする奇跡の器。
そんな器が自分のベースにも欲しいなぁ、なんてことを考えたり。
アーケードを抜けると左手に大きな鳥居。
この辺一帯が鶴形山というこんもりと小高い山になっているようで
寺社仏閣がいくらか点在している様子。
ここからいきなり写真が登場するのも
いわゆる「倉敷」という街のイメージ通りの街並が
この辺りから如実に見て取られるようになって俄然やる気が出てきたから。
気持ちも熱くなってきたついでに気温も暑い。
5月とは思えない初夏の陽気。
白人の女性が顔を真っ赤にたぎらせて汗をフキフキ歩いている。
公民館の建つ交差点は景色がパッとひらけて
左手に鶴形山トンネル入口、そして観龍寺へと上る石段。
この暑さの中、この石段をオレは上るのか?
上ったらもう引き下がれないぞ、汗をかくぞ、それでも上るのか? オマエは
と自問自答をしながら、
ただこの機会を逃したらもうこの石段を上った先の風景を見るチャンスは
恐らく二度と訪れないぞ、もったいないぞ、行けばきっと何か待ってるぞ、
とケチな探索心が一念発起して一歩一歩と石段を上る歩を進めさせる。
石段を上り切ると、観龍寺の門。やってまいりました。
すぐ右手に妙見宮という小さなお堂。
妙を見る。いい言葉。
玄のまた玄、衆妙の門。
些事に大事を見る、というような意味でしょうか。禅です。
なにやら由来の書かれた立て札があったが、流し流し読んだので全く頭に入っていない。
ただ鶴形山は元の名を妙見山というらしい。
妙見山のままの方が風情があったのでは、と余計なおせっかい。先を急ぐ。
さすがにこの暑さなので、誰もいない。人の気配すらない。
静かに佇む鐘楼が寂しそうだったので、カメラのセルフタイマー機能を使って遊ぶ。
恥ずかしい行為も人の目にさらされなければ恥じ入ることもない。
と思っていたらフーフー言いながら石段を上ってきた強者が現れたので
また何事もなかったかのような顔をして古寺巡礼を決め込んだ。
一回りして、さらに上へ
「←鶴形山」と書かれた看板に従って石段を上る。もう迷いはない。
しばらく進むと、阿智神社の鳥居がお出迎え。
鳥居をくぐるとこの一角だけうっそうと伸びた背の高い木々に囲まれた木陰になっていて
あ、涼しい、と思ったのも束の間、
一瞬で蚊が群がってきて耳元でイヤな羽音を立てて迫ってくる。
蚊の気配はあっても人の気配はない。
調子づいてまたセルフタイマー遊びをしていたら
頭上で大きなカラスがけたたましく鳴きながら枝をバサバサと揺らしている。
よくあるカラス同士の喧嘩かと思ったがどうやら一羽しかいない。
不気味になってその場を去ろうとしたらこちらの進行方向に合わせて
枝と枝をピョンピョンと飛び上がりながら追いかけてくる。
オレ、威嚇されている。
どうやら神域でふざけた遊びに興じていたのを不愉快に思われたらしく
カーカーとバサバサの合わせ技で威嚇射撃、存立事態発生。
しまいにはこのまま突撃してくるのでは、
と怖くなったので慌てて逃げた。
木陰を抜けるとカラスは途端に静かになった。失礼しました。
気を取り直して阿智神社をぶらりと一周。
賽銭箱に五円玉を放り込んでガラガラ鳴らして
二礼二拍手で一礼して。
外国からの観光客が数人、静かに境内を散策。
お守りの類いを物色している観光客に、
これはカー・セーフティーで…と英語で説明を試みている
女性の宮司さんがかわいらしい。
能舞台もあって、なかなか風情あり。じんわりと汗をかいてきた。
神社をあとにして今度は石段を下る。
下ったところで目の前に堂々たる店構えの酒屋さん。
一気に飲みたくなってくる。
レトロな街並を進む。
ジャズハウスやオーダーメイドの帽子屋、提灯のお店。
そして、あ、やっぱりありましたね、古本屋。
蟲文庫。
店先にはサボテンたくさん
暖簾をくぐると静かな音楽、
奥ではご夫婦でしょうか、店主らしきおふたりが
それぞれパソコンの画面を凝視しながら
黙々と作業に没頭(古書検索とか通販とか色々あるのでしょうね)
あれ、この感じ、というかこの女性店主さんなんか見たような気がするなぁ
と思ったら、あぁあれかな
「BRUTUS」の本屋特集で紹介されてたんだ、
この店主と「蟲」って文字と店の内装と
なんか印象に残っていたんだなぁ、でも倉敷って絶対行くことないだろうなぁ、
という店に偶然巡り会ってしまうというご縁。
さっき五円玉放り込んどいて良かったなぁ、あるんだなぁこういうことが。
虫のように這いずり回った成果だなぁ、ムシシシ
これはもう飲むっきゃないでしょ、と
記念に一冊購入して
またブラブラしていたらちょうど良いところに
お酒はんの自販機があったので一本購入(安めのやつをね)
プシュッと開けてまだ日の出ているうちからすみません。
歩きながらお行儀悪くてすみません。
あとはもう酒の向くまま足の向くまま
キラキラ光る水路の流れに従って
フラフラ歩けば気分は上々、
実はここがメインストリートだったのですね
観光客いっぱいの美観地区。
でも今のわたしはもう美観とかどうでもいいの。
フラフラと足を向けた先で偶然訪れたラフな出会いに
倉敷という街との思い出が一段落ついてしまった満足感に浸る。
よしよし、と続けてもう一本缶ビール空けたら
この阿房徒歩の旅の間に失われていた水分の分
アルコールが一気に吸収されたのか、
途端に酔いが回ってはい、それまでよ。
部屋に戻ってバタリと横になり、そのまま暫く眠りの中へ。
倉敷よいとこ一度はおいで
酒はうまいし、すてきな古本屋もありますよ。
また来たいなぁ。
☆いま調べてみたら蟲文庫さん、
開店22年目ということで驚き。
オシャレな外観とキレイに整理された店内の様子から
勝手に新しいお店かと思ってました。
スクービーよりアネさん文庫。スバラシイですね。




























