FUNKY4座談会 −後編−
「SPARKLE」全曲解説
1. JUMP TRAIN
キラキラ感を一番感じさせる曲で始まりたいなと。家でギターをポロポロやっててAメロのリフが出来たと同時に『JUMP TRAIN』てタイトルも浮かんできて、あとはすぐにバーと出来ちゃった。
イントロからしてキラッキラだもんね。俺は銀河鉄道999のオープニングで宇宙に向かって飛び立つ列車をイメージして歌入れしたんだけど途中
パクリ騒動
で裁判になった松本零士さんと槙原敬之さんの顔が交互に頭に浮かんできちゃって。それを拭い去って集中するのに時間かかったなあ。あれってどっちが勝ったの?
んなこた知らねえんですっ。ベースはリフをなぞりつつも所々ウラメロ的フレーズで曲に花を添えていく。スピード感も残しつつ歌の開けたイメージを低音で支えるっていうある意味俺の得意パターンで攻めてみました。
やっぱり僕はこういう明るく楽しい曲が性格的にしっくりくるんです。サビのストレートな8ビートでは、恥ずかしながら僕のファンキードラマーというパンツに隠したRockオットセイをご開帳させて頂きました。
2. MIGHTY SWING
スクービー流New Wave Funkをやろうと思ったんだけど。
Talking Heads
とか
Pig Bag
とかみたいな4つ打ちにリフを絡ませたFunkね。それとお祭り感満載のリズムの騒々しさが一体になって結果的に聴いたことないジャンルに着地したよね。
とてもテンションの高い曲なんだけど、スピードは早いのにリズムが細かく変わっていくからリズム隊としては意外と難しいんですよね、オカモトさん。
そうね。でも僕はリーダーが曲を持ってきた瞬間にリーダーの意図が分かったからプレイに迷いはなかったよ。よりによってレコーディング初日にウィルス性胃腸炎になっちゃって
『Little Sweet Lover』以来
はまったけど、結果オーライ。派遣切り経験者としては『生きてるだけで素晴らしい』って歌詞は重いよね。僕なりに言い換えれば『ラーメンは食うことに意義がある』ってことだからね。
全然違うよ! でもこのテーマってバーンとデカイ音鳴らしてお客さんを目の前にしたときに歌い手としては一番力入るね。どんな人でもやりたいことをやれるのは生きているうちだけで、弱小企業チャンプレコード社員としても非常に重みのあるメッセージとしても受け取れるよね。
3. BOOGIE DOWN
言わばイメージ通りのスクービーど真ん中なダンスナンバー。暗い時代への開き直り宣言でもある歌詞とも相まって、クールな雰囲気だけに留まらない曲になってよかったと思ってる。
AメロBメロは溜めてサビでバーンと開ける感じはうちの王道パターンだね。
純粋なFUNKナンバーに着地させたくなくて、変拍子を間奏に取り入れることによって緊張感と高揚感が更に加わりましたね。こういうのモビーさん嫌がるんだけど今回は率先して取り組んでましたよね。
僕もどっかで開き直らないといかんなと思ってね。僕の苦手な『家系』ラーメンも食べてみればイケるって店がまだまだある事を最近知ったんだよ。
一同
……。
座談会をリードしながら、核心をつく発言を連発するギタリスト/リーダー・マツキタイジロウ。
『朝まで生テレビ』田原総一朗ばりの手腕が頼もしい。
4. 砂のお城
俺が喉の大事をとってリハーサルを休んだ時に出来てた曲だね。俺曲作りのリハではあえて黙ってることが多いんだけど、あれって俺が余計な口出しすることで作業が滞るのを回避する目的があるんだ。言ってみれば釈迦の境地っていうか…。
そんな意図全く感じませんけどね。これはもともと詞とメロディーはあって、オケはこれ以外に2パターン試しましたよね。最終的にこのさわやかでメロウなアレンジに落ち着いたと。
シンプルな構成なんだけどリズムは隙間だらけで。だけど細かいフィルが多かったりしてドラマーとしては大忙し。具沢山の二郎系ラーメンとでも呼びたいですな。
スカッスカで緊張感のあるアンサンブルなんだけどメロウでグルーヴィーな曲になったよね。儚さの象徴みたいな『砂のお城』ってテーマをバンドでうまく表現出来たと思ってる。ギターソロはエンジニア中村さんの『時間潰してる感じ』っていうアイデアを音にしてみました。
5. ガレキの上のジェットコースター
JBみたいに無機質にリフを繰り返す曲が作りたいなとやってみたらかなりメロウな曲になったよね。
そんな意図を感じて俺はバッチバチに
スラップ
をキメてみました。曲の肝となるAメロのリフをドラムがブレイクビーツっぽく支えてるってイメージですよね、モビー。…さん。
そうね。今回はリズムが表から裏、裏から表へ変化していくことで曲を展開させることが多かったから、頭と体をリンクさせる作業に手間取ったりしたね。
頭は無駄にでかいのにな。バックはすっごくファンキーなのにメロディーは80年代のブラコンぽさを感じたり、甘酸っぱくもいやらしい詞の世界観を見て、歌い手としてはどこまで喉を湿らすかってとこに意識を注いだよね。
自らのプレイについて言葉を選び慎重に語るも、どこか天然なドラマー・オカモト“MOBY”タクヤ。
ラーメンの話となると自然と顔がほころび、この表情。
6. 彼女のプレイメイト
『パラサイティック・ガール』の収録曲候補の中に既に入ってた今回のアルバムでは最も古い曲。ビートはドファンクなんだけどぱっぱっと展開していったり変拍子が入ったりと、繰り返しの高揚感とか長尺の熱量みたいないわゆるFUNKの基本とは真逆の試みだよね。まあ曲作る時にFUNKがどうとかまるで考えてないけど。
どちらかというとベースがグルーヴを作っている曲なので、低音部分は支えつつもサビの裏メロフレーズなんかはかなり気合い入れてプレイしましたね。
しかし『彼女』ってのはいったい誰なのか。気になるよね。
叶姉妹でしょうね。間違いなく。
お前の勝手なイメージだろ!この場合はやっぱり見た目はすっごく清純そうで大人しそうな、んー例えば綾瀬はるかみたいな子が裏ではホントの意味で世界を股にかけてるってほうが俺は萌えるよ。俺はね。
7. B型のマイガール
B型の人って偏見持たれがちじゃん。自分も含めてそんなB型の人達を慰められるような曲が出来ないかなって。
僕は血液型で人格が分けられるなんて思わないけどね。まあ曲はオーソドックスなノーザンソウルタイプなんで、16分で刻むタンバリンは絶対に入れたかった。もう誰がなんと言おうとこれだけは絶対に譲れなかったっす。
その頑なさがB形丸出しなんだよ! この手の曲はスクービー的には18番だよね。しかし今日はよく喋ったなあ。そろそろ終わりにしない?
あんたもB型丸出しだよ!
頭をかき乱し、騒がしく語るヴォーカル・コヤマシュウ。
が、他のメンバーが喋っているときは途端にローテンションという典型的B型ぶりを発揮。
8. 遺伝子狂騒曲
8ビートなんだけどでっかいリフがいびつに突き進んでく感じ。10メートル先位から液体とか光とかクモの糸みたいなものがブワーっとこちらに照射されてる感じの曲になれば俺の中では完成だった。
手数の多さにスピード感を加えてベースでもその照射感を出してみました。イントロとかDメロのギターとベースの掛け合いはうちのアレンジとしては斬新ですよね。サビはつるっとし過ぎないようにモビーさんとフィルを組み立てましたよ。な?
はい。僕的にはサビ前のキメにはこだわりたいんすよね。やっぱり曲の一番の盛り上げどころだし、そこは僕も知恵を絞りましたよ。ラーメン屋も店構えってラーメン以上に大事じゃないですか。
話のすり替えが甚だし過ぎるよ! 歌い手としてはとにかく絶倫感を出すことを心がけたね。下半身で歌う感じっていうか。やっぱり俺自身が元々淡白だから足りない部分はスタジオにあったカラオケエコーをかけてもらって場末のスナックで顔を真っ赤にしながら歌うおっさんをイメージしたよね。
9. C.H.E.R.R.Y.
普通にやってもかっこよかったんだけど、アルバムに1曲はピースミュージックでしか作り得ないような実験的な曲が欲しくて、俺がサウンドプロデュースしてみたんだ。とは言え具体的なアイデアが全く浮かばなかったから、その場でなんとなく皆に無茶なリクエストをして時間稼ごうと思ったんだけど思いのほかサクサク音作りされてしまって。
無茶振りには無茶返しですから。言ってみればインダストリアル・ファンクですかね。
とにかくドラムが必要以上にバスバスした音になればよかったんだけど、気付いたらギターもベースもワケわかんない音になっちゃってて、歌入れのとき音程取るの必死だった。知らぬ間に飼い犬に手を噛まれてたみたいな。
真ん中のハープソロも
ワーミー
かけたらテープの早回しみたいな音になったしね。でもこの『CHERRY』って言葉の持つ比較的甘酸っぱいイメージをいかに裏切ったものにするかっていう試みにははまってるよね。
まあリズム隊として完成図は常にイメージしてますから。な、モビー。
はい。男としてよりドラマーとして僕はまな板の上に乗せられる方が好きなんす。
気持ち悪いよ!
冷静沈着なツッコミ&MOBYへの献身的な(執拗な?)フリでもって、場を引き締めるベーシスト・ナガイケジョー。
そのプレイ同様、ソツも可愛げも無い。
10. ORANGE
青春ソウルロック。早い話が8ビート。ここまでさわやかでストレートな曲はスクービーにはなかったね。
詞の黄昏感とか夏感はあったけどね。
イントロのベースのフレーズはパッと見つかりましたね。正に降りてきたって感じ。全体的にはライヴ中テンションが上がっててもがっちりプレイ出来そうな曲になりましたね。
早いけど一緒に歌いながらドラムを叩けるタイプの曲ですね。こういうのは好きな感じなんだけどライヴ中つい一緒に口ずさんだ僕の鼻歌がマイクに乗らないように気をつけないと。
ジャイアンコンサートになっちゃうからね。しかし『C.H.E.E.R.Y.』とこの曲との世界観のギャップはこのアルバムの1つの聴き所だろうね。
11. OH YEAH! OH YEAH! OH YEAH!
スカっぽくもあり、カリプソっぽくもあり、ニューウェーブっぽくもあるけどどれでもない感じになったよね。
バーっとみんなで騒げる曲になればいいと思ってサビも『オーイエー』って1回聴けば歌えちゃう詞にしたんだ。
難しくしていくのは簡単だけどシンプルで分かり易いアレンジにしていくのって難しいですよね。この曲は展開が意外と多いのにそう感じさせないアレンジに出来てよかった。モビーも喜んでるし。
はい。ドラムのパターンが決まらないことには曲作りが進まないのでキックの4つ打ちが思いつくまでは気が気じゃなかったっス。時間に追われると気が短くなる人もいるし。
お前だろっ。
オープニングのシュウ君のシャウトでこの曲のお祭り騒ぎ度がグッと上がったよね。
12. LONELY STEPPERS
メロウなソウルナンバーって気持ちで作ったんだけど、なかなか切なくなったね。
元々は8ビートで偶数小節の頭を裏で食ってっていう『
茜色
』とか『
夕焼け
』みたいなアレンジでしたよね。
そう。でもなにか物足りなくて、思い切ってリズムもコードも別物にしてみたらはまったね。
あまりに別物だったから最初はよく分からなくって黙ってた。
あんたはいつも黙ってるでしょうがっ。
ビートの上に細切れのリフが乗っかって曲が進んでいくこの80年代ぽさって僕ぁ好きっすよ。ラーメンもなんだかんだ言って二郎が一番好きだし。この感覚って自分のDNAに刷り込まれてる気がするんだよなぁ。
お前はラーメン食べすぎだよっ。
(編集&撮影/チャンプレコードスタッフ)
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