──はい!(宮尾すすむリスペクトなポーズで)ということで本日は、スクービードゥーのソウルメイト、サンボマスターから山口隆さんをお迎えして、我らがリーダー、マツキタイジロウと共に、新作『MIRACLES』を肴にあれやこれやと語り合おうじゃないかと、そういう企画です。お二人ともよろしくお願いいたします!

山口&マツキ「よろしくお願いします!」

──そもそもお二人は同世代ですよね?

マツキ「ヤマちゃん(山口)は76年の早生まれで、俺は75年」

山口「学年は一緒なんですよ」

──いつ頃お互いの存在を知りましたか?

山口「僕らは学生時代から一方的に知ってて。下北とか行ってライヴのチラシを持って帰ってくると、そこには必ず“スクービードゥー”ってあった。音も
ヒップだったし、かっこいいなあと思ってました」

マツキ「俺がサンボを知ったのはデビューの頃じゃないかな。その頃、俺の数少ない学生時代の音楽好きの友達が〈いまサンボマスターがいちばんヤバいよ!〉って言ってて。俺も名前は知ってたんだけど音は聴いたことなくて、たまたま〈美しき人間の日々〉のお坊さんが出てくるPVを観たら〈うわあ!〉って、ものすごく好みの感じだなと思ったんです。その頃のサンボはどっちかっていうとパンクな畑でやってる印象だったけど、サウンド的には黒い感じがあった」

──その頃のスクービーは、関根勤でいうと“ラビット関根”から改名してキレ芸オンリーの芸風から脱却してる時期、つまりソウルマナーへのこだわりがいい感じで緩みはじめた時期ですよね。

マツキ「例えはちょっと分かりにくいけど(苦笑)、そうですね。サンボが出てきたタイミングって、自分の中で〈こういうやり方をしたらソウル感を消さずにロックバンドのあり方として行けるんじゃないか?〉みたいなうすぼんやりとしたアイデアを持ってた頃で、〈もうすでにサンボにやられた!〉みたいなことは感じたかな。〈世界はそれを愛と呼ぶんだぜ〉とその前後の流れあたりの、バンドなんだけどソウル感を残す感じにやられたなあ」

──当時、みんなビックリしましたよね。それこそモッズ・シーンからブルーハーツが登場した以来の衝撃で。

山口「いやいや!とんでもないです!ありがとうございます!」

マツキ「そうこうしてるうちに、サンボのツアーに呼んでもらったんだよね」

山口「そう、一緒に演りたいなあと思って。〈Get Up〉のライヴ映像をみると、リーダー・マツキが、まあとにかく悪い顔してるんですよ!」

マツキ「ははは(笑)」

山口「ブライアン・ジョーンズみたいな顔で演ってて……かっこいいなあ!と思って、一緒にやりたいなあと思ったんですよ!」

マツキ「そんなに悪い顔、してた?」

山口「してたしてた! なんか生意気グルーヴがガンガンに出てて、すげえいいなあ!と思って。バンド全体はワーッ!てやってんだけど、リーダーだけ別に何ともない、みたいな」

マツキ「そうそう(笑)。僕はだいたいそんな感じだった」

山口「俺は、マツキリーダーは今の感じがいちばん好きなんだけど……あのときからかっこ良かった!」

マツキ「どんなホメ方だよ、それ(笑)」

山口「俺はね、へんな義務感なんですけど、〈俺がやんなくてもこの人たちがやってくれてんだなあ〉と思わせてくれるバンドやアルバムがすごく好きで、この『MIRACLES』もそう!どっちが上だ下だっていうことではなくて、俺がやらずともやってくれてるバンドは素晴らしいし、リスペクトなんですよね。実際に俺は、『MIRACLES』にも前作の『何度も恋をする』にも勇気づけられたんですよ!」

──スクービーはホント、常に最新が最高だと思いますよ!

山口「一曲目の〈ありふれた愛を〉の“2011年の〈Ain't No Mountain High Enough〉”な感じ!Bメロのコード進行とメロディとか、あれがとにかくよかった!──いや、ホントはそんな細かいところじゃなく、みんなにはもっとデッカく聴いてほしいんだけど──ドラム鳴ってんのにさらにそこにタンバリンの音を入れてくるところとか、ソウルと言うよりやっぱりロックバンドゆえの過剰さ加減が最高だと思う。かと思えば〈ミラクルズ〉ではバンド編成の妙を聴かせる感じ!そしてワタクシ、この〈ドア〉がいいんですよ~。スクービードゥ-の〈なんか悲観的なとこもあるのね〉みたいなとこも含めて、すごく突き刺さってくる!」

マツキ「完全ポジティヴになりきれないからね(笑)」

山口「そういう不安を抱えてるのがやはりロックだなあと。今回、いちばん僕が〈こう来たか!〉と思ったのが最後の〈あと1杪の夜が〉!これはきれいなシメ方しましたねえ!」

マツキ「うちはわりとしっとりした曲で終わるってのが定番化されてて、今回もご多分に漏れず」

山口「リーダーのギターソロも、今回、ホント皆さんに自信を持ってオススメできるんですよ。リーダーの葛藤が垣間見れるというか……〈俺、もうちょっとギターさげようかな?〉みたいな、どうでもいい葛藤ね」

マツキ「あったあった!(笑)……いっぱいありました(シミジミと)」

山口「デカくしようが小さくしようが、聴く人にとってはホントどっちでもいいんですよ。でもギタリストってそう思うんだよね」

──いやそこリスナーには分からんですよ!ギタリストならではの聴き方ですよね、おもしろいなあ。

山口「本当に前作も素晴らしかったんですけど、〈メロディー量産期に入ったのか?〉っていうくらい、いい感じでしたねえ、僕には」

マツキ「いまギタリストの話が出たけど、今回ね、ギターよりも鍵盤をがんばった。もともとピアノとかぜんぜん弾けなかったんだけど、自分の作った曲に関しては自分で弾けるようになりたいなと思って。今年は本当にがんばってみようと思って、ちっちゃいシンセを買って家で練習したんだよ、3ヶ月くらい。それで、どっちかっていうと、“ギタリスト目線”っていうよりは“アレンジャー目線”でアルバムを作ったの」

山口「それはまた、『何度も恋をする』とは違った感じだよね」

マツキ「うん、違った感じ」

山口「なんというか……本当は自分たちの手で作ってるんだけど、ひとり強力なプロデューサーがついてバンドとケンケンガクガクと話し合いながら作った、みたいな印象はあるよね」

マツキ「ああ、そうかもね」

山口「たとえば、クインシー・ジョーンズがブラザーズ・ジョンソンをプロデュースするときに〈この音にしたいんだけど〉って言うんだけど〈クインシーちょっと待って!こんな小さい音イヤだ!〉って言い返す……みたいなことを自分でやってる感じ」

マツキ「はははは(笑)。でもね、俺なりに、我慢っていうんじゃないけど、なるべく自分たちの音じゃない音にしたいなって思いがあって。まあ、結果として自分たちの音になっちゃってるんだけど」

山口「それでいいんですよ!」

マツキ「パッと聴いたときに、常に自分が新鮮に感じられるサウンドにしたいなと思って、今までにない感じを目指したんだけど」

山口「俺はね、スクービーはぜんぶ好きなんですけど、最近の2作が特に好きなんだよね。ホント偉そうですけど、“リーダー言語”をここまで出せてるのは、やっぱりここ2作なんじゃないかな。もちろん名曲はいっぱいありますよ!〈Get Up〉からはじまって、僕の大好きな〈最終列車〉……いやホント名曲だらけ!だから作り手としては、ホント勇気もらえますよね。進化、ぜんぜんできるなあ!って。スクービーの前作に、ホント俺は救われたんですよ。今回もそうですけど、そういうものとしてみんな聴いてくれたら嬉しいな……なんというかなあ!……“Blue Monday People”っていうか、ちょっと〈面白くないなあ〉と思ってる人のために鳴ってる感じがすごくして。音楽や曲が、それに繋がってるのが俺はスゲエと思うんですよ!録り方とかも重要なんですけど、最終的にはそういう人たちにバチッ!と寄るっていうか、そういうものがすごくあるなあと思ってるんですけどね。歌詞もそうだけど……誰が書いてるんだっけ?」

マツキ「歌詞は俺が書いてる」

山口「あ、作詞も作曲もやってんだ!悪いことやってんなあ…ワルだね!ジョニー・ブリストルだね!」

──そりゃ悪いですねえ(笑)

山口「まあ簡単に進化したとか言うけどさ、大変なんだよね!」

マツキ「進化してるかどうかは分からないけどね」

山口「いや、俺はしてると思うけどね。やっぱり、“勝ち取った”ものだと思うんだよね。音楽で勝ち取ったっていうのはスゴいことで、時代に響くっていうことでは前作もこの『MIRACLES』もすごいグッときたんだ。両方ともすごいアルバムだと思うし、大好き!でも今回は、前回より“Get Back 60's”な感じはあるよね」

マツキ「そうだね、ちょっとモコッとした感じ」

山口「“Get Back 60's”な感じってけっこう難しいよね、もう手あか付きまくってるから。リーダーが作ってるって言っても、自分の中にもともとあったものを取り戻したっていうんじゃなくて、勝ち得たからこそ、響いてくる。ギターの音もよかったしねえ……これ1ヶ月くらいで録ったの?」

マツキ「そうだね」

山口「もめることもなく?」

マツキ「あんまりなかった。リズムは2日半で終わって」

山口「いいね!今回はロックっぽいこと考えた?それともありのまま?」

マツキ「ありのままだね。ロックっぽさとか、もうよく分からなくて」

──類型的で陳腐なロックとは違うサウンドですよね。


山口「そこがまた素晴らしいところで!同じ手法やコード進行でやっても、いまは生で音を録るとそういうい類型的なところにはまりがちなんだけど、やっぱり勇気を持って勝ち得れば、それでも新しいものとしてできるんだ!みたいなところもあったから勇気をもらえたし……やっぱり俺がやらなくても大丈夫だな、俺は俺のやり方でやればいいか!と思って。でも、『MIRACLES』や『何度も恋をする』を聴いてると、休みができたらスクービーのサイドギターとして付いて回りたい!って思うわけですよ!」

マツキ「やってよ!ぜひ!(笑)」

(聞き手:フミヤマウチ)
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