1  太陽と女の子

マツキに内山田洋、ナガイケに小林正樹、MOBYに森本繁……ファンキー4のメンバーにクールファイブ(*1)の魂が乗り移った! 仕方がないのでそのまま演奏したところ、ソリッドでアップリフティングなのにどこかムードテイスト、という異形のサマーロックンロールアンセムが完成した。担当楽器が一致しないハゲ眼鏡でおなじみ宮本さんと美男子・岩城茂美のスピリットは、おそらくエンジニアの中村氏に。その一方で前川清をコヤマに降ろさなかった音楽の神様、大正解。

 2  きれいなお姉さん

ロックンロールバンドとしてのプライドをほのかに感じさせる、ブラコン(*2)ベースの湘南サウンド、テン年代ヴァージョン。ヤレるためなら土下座や暴力も辞さない男が多い昨今でありながら、この歌の主人公は自分の心情を素直に表出することでみごと目的を果たす。「北風と太陽」はやはり正しい。しかしこれがケーシー高峰(*3)だったら!? はたまたブラマヨ吉田だったら!? 「俺の数倍きれいだ」と真顔で言われた、おそらく肌もきれいなお姉さんの心境やいかに。

 3  ロールオーバー14歳

ある晩、西川峰子(*4)の家の窓をコツ、コツ、となにかが叩く。「なにかしら?」と外を見ると、そこにはなんとか気づいてもらおうと小石を投げ続けるショボクレた顔の火野正平(*5)が。こうして母性本能をくすぐられた西川はあっさりと火野に落ちたのだった。その時の火野の頭の中で流れていたのがこの、スクービーお得意の緩急自在な16ビート(*6)・ロックンロールナンバー。そう、君たちのような不器用さや傷つきやすさが意外と女心にヒットするものなのだよ、現役14歳の男子諸君。

 4  バンドワゴン・ア・ゴーゴー

小学館入門百科シリーズ・48「不滅の大打者 王貞治物語」(大島やすいち/画)によると、王さんは現役時代、暑い夏にこそ熱いお茶を飲んでいたそうな。サダハルスピリットの継承者・スクービーもまた、暑い夏にこそ熱い歌を歌い上げる。その熱さは例えるなら80年代、イアン・マカロック(*7)に鼻でせせら笑われながらも「68 GUNS」を歌いきったジ・アラーム(*8)のよう。そういやジ・アラームのスタートは60年代R&B(*9)のスピリットを蘇らせようとしたネオモッズ(*10)・バンドなのだった。

 5  秘密の果実

アルバム屈指の高速ファンクナンバー、その1。「プレイボーイ」の新聞広告では「★」で隠されていた「秘密の果実」を巡る男女の攻防を描きながら、男子には勇気と気配りを、女子には貞操とプライドを説く。家族の前でなんのてらいもなくこのナンバーを聴けるようになったらレベルアップだぜ、現役14歳の男子諸君。かつて我々オッサンがRCサクセション「雨上がりの夜空に」を、兄ちゃん姉ちゃんがゆらゆら帝国「スベるバー」を、お茶の間で聴いていたように。

 6  セツナ

『パラサイティック・ガール』収録の「Private Lover」同様、ワンナイトラヴを描いたメロウチューン。あちらが道玄坂のカビ臭さだとしたら、こちらは134号線沿いの潮の香りか。ほら、ボス戦の前にメタルスライム(*11)とか狩ってレベル上げするじゃん? あれだよあれ。真のボスは君さ──という言い訳は火に油を注ぐ結果になるのでステディのいる君は要注意。でも男のEXPを上げるためにはそんな「セツナ」い恋の積み重ねも重要! その後のことは君たちへの宿題だ。

 7  恋をした男子

「何度も恋をする」というフレーズに対するケーハクなイメージが、男のド純情に180度ひっくり返る奇蹟の瞬間。エンディングに向けて高らかに鳴らされるホーン、とりわけフルートの音色が、そんな男のピュアネスを祝福する。例えばこんな場面はどうだろう──ある晩、初老のサーファーが長年連れ添った妻を誘って浜辺へ。何も言わず手をつないで砂浜に寝転ぶ2人にこの曲が鳴り響く──男はしょせん、いくつになっても「男子」なのだ。

 8  ブランニュー俺

スクービーお得意の高速ファンクナンバー、その2。どんだけ「俺」が好きなのよ!?と言われようが「俺」を好きになれない男に他人を愛せるはずもなく。男は脱皮を繰り返す、自分自身であるために。教室で延々とエロ話を続ける男子を変態視するそこの現役14歳の女子諸君! そんなのは男子特有の麻疹みたいなかわいいものだ。しれっとこんなベースラインをブリブリとかますナガイケのような男にこそ、真の変態は潜むものだから気をつけるように。

 9  恋のウイルス

これまたお得意の16ビートナンバー、プラス、そこかしこにギターポップ(*12)にも通ずる胸キュンフレイヴァーが散りばめられた恋愛賛歌。ところで皆さんはこのアルバムに1曲としてフェイドアウトでフィニッシュするナンバーがないことにお気づきだろうか? 恋が始まればいずれはっきりとした終わりが来る。それは「ロールオーバー14歳」で歌われるようにつらいつらいつらいことだが、人は性懲りもなく今日もまた、新たなウイルスに冒されるのだった。

 10  ガールフレンド

20年後の気の利いた選曲家がこの曲を「フリーソウル(*13) 00'sジャパニーズ」というアルバムにコンパイルしたとしてもなんら不思議はない、アルバム屈指のメロウ・ダンサー。この曲でもまた不器用で純真な、安西先生(*14)からも「まるで成長していない……」と言われかねないフォーエヴァー14歳な男心が描かれている。しかしこの歌の主が火野正平だとしたら、そこになにかしらの下心が見え隠れして意味が変わってくる……と、ここでまさかの火野再登場。

 11  イキガイ

アルバムのクロージングテーマはこれくらいの軽さがちょうどいい。1966年、シュープリームスによって歌われた「You Can't Hurry Love(恋はあせらず)」のビートはいわゆる「モータウン(*15)ビート」と呼ばれる定番となり、後世、数々の名曲に引用されてきたわけだが、スクービーもまた然り。大事なことなので2回言うのではなく、軽やかなビートでさりげなく。何よりもスクービーが好きならそれだけで生きていられるぜプラスワンモーの皆さん。やっぱ音楽は素晴らしい!